微温的ストレイシープ
しかし虎牙さんは、最早そんなことはどうだってよかったらしい。
「ひゃっ……」
首元に顔を埋められて、軽いリップ音がわたしの耳にも届いてきた。
はあ、と漏らされた息が熱くて、首に熱が集まっていく。
「ど、どうしたんですかっ……!?」
わけの分からないまま襲われて、怖いという気持ちもあった。
でも。それでもまだ、わたしは彼のお腹の傷が気がかりだった。
彼自身が傷のことを忘れているようでもあり、わたしはぐっと虎牙さんの肩を押し返した。
「っ……!」
彼の目は、獣そのものだった。
理性と、本能。
その相反するふたつが混ざったような瞳をしていた。