微温的ストレイシープ
でも、まだ虎牙さんは本調子じゃなさそうで、またソファに寝転がり。
「……今夜は危ねぇ。はやいとこ連れてってやれよ、そいつ」
なんて言葉を最後に、目を閉じたまま動かなくなってしまった。
でも息はちゃんとしているようで、ほっと息をつく。
廉士さんはようやくわたしから手を離した。
「お前も、すこしは危機感もてよ」
「……はい。ごめんなさい」
しゅんとして、謝る。
廉士さんはがしがしと頭をかいたあと、わたしから目をそらした。
「もういい。行くぞ」
「あの、当麻さんたちに声かけなくてもいいんですか?」
「いらねーよ、わざわざ。これが永遠の別れってんなら別だけどな」
だから、わたしたちはふたたび当麻さんたちに会うこともなく。
来た道とはべつのところから地上に出たのだった。
また長い階段を上がる途中、
まるでアリの巣みたいだな、なんて思い。
そんな心の声が廉士さんに届いてしまう前にと、わたしは頭を振るった。