微温的ストレイシープ
𝘴𝘮𝘰𝘬𝘦
地上に出てからずっと、廉士さんは早足で往来を進む。
さっきよりも速くて、わたしは小走りで付いていかなければならなかった。
でも寒いし、身体が温まるからちょうどいいかも。
閑静な道に響くのはわたしの地面を蹴る音だけ。
「廉士さん」
「あ?」
「さっき、わたしを外に追い出すって……」
「ああ、言ったな」
なんの抑揚もない声で、間髪入れずに返ってくる。
「あの、それからはわたし、どうしたらいいんですか?」
「それ本気で言ってんの?んなこと知ったこっちゃねーよ。お前がどうなろうと俺には関係ない、どうでもいい」
「でも……」
まだ食い下がろうとするわたしに痺れを切らしたのか、廉士さんが振り返る。
「いいか、これ以上ここに面倒ごとを持ち込むな。よそでやれ」
そのよそにわたしは連れていかれるんだ。
廉士さんは、わたしのことが嫌いだから追い出そうとしてるんじゃない。
たぶん嫌われてはないけど、きっと好かれてもない。
ただ“面倒な存在”としてここから排除されるだけ。
「……わかりました」
ごめんなさい、
聞こえないくらいの小さな謝罪は、届いたかどうかわからない。
でも、もう一度、廉士さんのため息が返ってきたのだった。