微温的ストレイシープ
何重にもなった足音とともに、わたしたちに迫ってきている。
廉士さんは小さく舌打ちをした。
「次から次へと……!おい、さっきの借りはここで返す。表通りにはこのまま真っすぐ進めば着くから、行きたきゃ今のうちに行け」
最初に到着した男を、廉士さんがすばやく足技をかけて地面に倒した。
もうすぐ他の人たちの手も届く。
迷える羊は、暮れる日を見た。
どこかもわからない草原、
落ちていく夕陽を……その目で。
後ろを向いてる廉士さんの手をつかんだ。
「わたしは……自分が誰なのかを知りたい。
諦めたくない。
廉士さん、わたしと一緒にいてくれますか?」
永く、感じられる。
でも、ほんのわずかな時間だったのかもしれない。
わたしの手を振り払った廉士さんは、
ちゃんと、その手をつかみ直してくれた。
「朝になったら交番に突き出すからな!そこからは自分でなんとかしろ!」