微温的ストレイシープ
パトライトは廻らない
𝘵𝘳𝘢𝘤𝘬𝘦𝘳
§
「見て、奈緒くん。綺麗なお月様だねぇ」
榛名宇緒の声につられ、榛名奈緒は空を見上げる。
そしてすぐに怪訝そうな顔を隠そうともせず、
となりにいる榛名宇緖を睨みつけた。
「いまの状況がわかってんのかよ、兄貴」
「んーわかってるよ」
何もわかってない脳天気な返しに、榛名奈緒は無意識に自分の耳に手を持っていく。
それは彼がイライラしたり、興奮したりしたときにする癖だった。
指に触れたフープピアスが音を立てる。
「灯里がいなくなったんだぞ?悠長にしてる暇はない」
「大丈夫だって。ほら、町外れにそれっぽい女の子がいたって連絡があったよ」
見て、と榛名宇緒が向けてきたのは端末の画面だった。
そこに書かれていた文章を目で追ったあと、眉間にシワを寄せた。
顔こわーい、とおどけるようにしてみせた榛名宇緒は柔らかな笑みを崩そうともしない。
「みんなで探してるんだから、きっと見つかるよ。ね?」
「……はあ、急ぐぞ」
口うるさく言うだけムダだと判断した榛名奈緒は、端末に記されていた場所へと歩を進めたのだった。
「見て、奈緒くん。綺麗なお月様だねぇ」
榛名宇緒の声につられ、榛名奈緒は空を見上げる。
そしてすぐに怪訝そうな顔を隠そうともせず、
となりにいる榛名宇緖を睨みつけた。
「いまの状況がわかってんのかよ、兄貴」
「んーわかってるよ」
何もわかってない脳天気な返しに、榛名奈緒は無意識に自分の耳に手を持っていく。
それは彼がイライラしたり、興奮したりしたときにする癖だった。
指に触れたフープピアスが音を立てる。
「灯里がいなくなったんだぞ?悠長にしてる暇はない」
「大丈夫だって。ほら、町外れにそれっぽい女の子がいたって連絡があったよ」
見て、と榛名宇緒が向けてきたのは端末の画面だった。
そこに書かれていた文章を目で追ったあと、眉間にシワを寄せた。
顔こわーい、とおどけるようにしてみせた榛名宇緒は柔らかな笑みを崩そうともしない。
「みんなで探してるんだから、きっと見つかるよ。ね?」
「……はあ、急ぐぞ」
口うるさく言うだけムダだと判断した榛名奈緒は、端末に記されていた場所へと歩を進めたのだった。