微温的ストレイシープ
灯里は正真正銘、2人の妹だった。
榛名宇緒が双子の兄、榛名奈緒が双子の弟。
そして兄たちより6つ下の灯里は末っ子長女である。
3人はいつも一緒にいた。
だから兄たちが焦るのも、当然のことのように思えた。
……が。
「あれ、君たちだけ?」
目撃情報があった場所に着くなり素っ頓狂な声をあげたのは、兄の榛名宇緒だった。
黒縁メガネの奥にある瞳をわざとらしく見開いて、目の前の人物たちを見つめている。
ふたりが到着したときにはすでに灯里の姿はなく、数人の青ざめた男たちだけが出迎えた。
「灯里は?」
と、弟の榛名奈緒が訊く。
「す、すみません!必死に追いかけたんですが、見失っちゃいまして……」
「はあ?んだそれ」
「すっすみません!!すみませんっ……!!」
必死になりながら地面にあたまをこすりつける男たち。
榛名奈緒はその光景を冷めた目で見ていた。
年齢が一回りも違う相手によくもまあ、ここまでできるな……と。