微温的ストレイシープ
「おい、それくらいにしとけ。人手が足りなくなる」
「奈緒くんは本当に優しいね。でも大丈夫だよ、まだ手はあるから」
榛名宇緒がここまで余裕を見せているのには、ある理由があった。
ともあれその言葉を聞いていた男たちが、この世の終わりのような顔をする。
でもそれ以上、犠牲者が出ることはなかった。
理由は簡単、榛名宇緒が痛めつけることに飽きたからだ。
「ねえ君たち」
「っはい……!」
「次はちゃんと連れてこい。見つけるまで俺たちの前に顔を出すんじゃないよ」
それまで笑顔を貼り付けていた榛名宇緒が、
すうっと真顔に戻る。
「わかったな?」
この男だけは敵に回したくない。
年甲斐もなく目に涙をためて頷いている男たちを見下ろしながら、榛名奈緒は心の中でそう思ったのだった。