微温的ストレイシープ
𝘱𝘰𝘭𝘪𝘤𝘦
その音に気づいたのは、たまたまだった。
「あ、ちょっと待ってください!なにか落ちて、」
あがる息を整えるより先に急ブレーキをかける。
前を走る廉士さんをぐんと引っ張るようなかたちになってしまった。
「お前、急に止まんなよ……」
「ごめんなさい。でも、なにかが」
地面に目を向ける。
やっぱり。すこし戻ったところにそれは落ちていた。
拾いあげると、廉士さんも近くに来てのぞき込んだ。
「ネックレス?」
「たぶんさっき殴られたときに、チェーンが切れかかったんだと思います」
振り下ろされたのがちょうど上だったんだろう。
その証拠に、不自然なところからネックレスは切れていた。
ネックレスの存在に気づいてはいたんだけど、それを確認する余裕はいままでなくて。
やっと、じっくりと眺める。
英国のメダルのような、ペンダントネックレス。
それをポケットにしまおうとしたけど、すぐに自分の着ている服にポケットはないことを思い出した。
「どうしよう……」
「捨てていけば」
「でも、捨てたら後悔しそうな気がして」