微温的ストレイシープ
そこまで長距離を走ったわけじゃないのに、心臓はばくばくと暴れていて。
思えば今だけじゃなかった。
最初から、ずっと。
わたしの体力は全くといっていいほど、なかったんだ。
まるで、何年も運動していない人のように。
「あー……水、買ってくるわ」
「いっ、いいです!もう落ち着いてきましたし……」
「ほんとかよ。急に倒れたりしないだろうな」
「しないです。しないです、たぶん」
「信用できねぇ」
そのかわり、すこしだけ休ませてもらうことにした。
座れそうな場所を探して、わたしだけ座り込む。
廉士さんは立ったままだった。
「ははぁ……なるほど」
「なにがだよ」
「絶対、きたねーなこいつって思ってる」
「そーゆーの被害妄想って言うんだけど」
すでにみんなから“汚い”って言われなくってるわたしには、痛くもかゆくもない。
……いや、本当はちょっとだけ痛いけど。