微温的ストレイシープ
髪だって、走ったらすぐボサボサになっちゃう。
何でこんなに長いんだろう。
逃げるときに邪魔になるし、なんたって頭が重い。
「ばっさり切りたいなぁ」
「……おい」
「へえ?わっ、」
手ぐしで髪をとかしつつ振り返れば、大きな手が目前まで迫っていた。
そのまま、髪に触れられる。
すっと戻された手からひらりと落としたのは、どこでついたのか葉っぱだった。
「あ、ありがとうございます」
「お前だけは女に見えねーわ」
「え、じゃあ男に見えるんですか?」
「その天然ボケもうぜぇから」
ここまで頼っておいてなんだけど、なんでわたしのこと助けてくれたんだろう。
そう思ってしまうほど廉士さんは辛辣極まりなかった。
「つーかお前さ、中まで白ってどーなの」
「はあ、」
なんのことだろう?
白、しろ。
たしかにわたしの着てるワンピースは白だけど。
中まで、って……
「……っ、ちゃっかり見てるんじゃないですか!変態!えっち!」
「安心しろ。これっぽっちも興奮しねーから」
「ひど……、もうお嫁に行けない」