微温的ストレイシープ


髪だって、走ったらすぐボサボサになっちゃう。

何でこんなに長いんだろう。

逃げるときに邪魔になるし、なんたって頭が重い。




「ばっさり切りたいなぁ」

「……おい」

「へえ?わっ、」



手ぐしで髪をとかしつつ振り返れば、大きな手が目前まで迫っていた。

そのまま、髪に触れられる。


すっと戻された手からひらりと落としたのは、どこでついたのか葉っぱだった。



「あ、ありがとうございます」

「お前だけは女に見えねーわ」


「え、じゃあ男に見えるんですか?」

「その天然ボケもうぜぇから」




ここまで頼っておいてなんだけど、なんでわたしのこと助けてくれたんだろう。

そう思ってしまうほど廉士さんは辛辣極まりなかった。



「つーかお前さ、中まで白ってどーなの」


「はあ、」

なんのことだろう?


白、しろ。

たしかにわたしの着てるワンピースは白だけど。


中まで、って……






「……っ、ちゃっかり見てるんじゃないですか!変態!えっち!」

「安心しろ。これっぽっちも興奮しねーから」

「ひど……、もうお嫁に行けない」


< 76 / 211 >

この作品をシェア

pagetop