微温的ストレイシープ
「いつか物好きが現れるだろ。知らねーけど」
どうしよう、ぜんぜんうれしくない。
でもどうでもいい話のおかげで、さっきまでの張りつめた空気は少しマシになっていた。
だから掘り返すのは気が進まなかったんだけど、それでも聞いておきたいことがあった。
「廉士さん、いろんなやつに狙われてるって言ってましたよね。さっきの……シュトリの人たち以外にも狙われてるんですか?」
何も答えてくれなかったけど、辛抱強く待った。
「俺たちは一夜かぎりの関係だ。お互い、知ったところでだろ」
「一夜かぎりだからこそ、知ったとしてもお互いに害はないんじゃないでしょうか」
「ほんっとうに面倒くさい女だな」
「女って言ってくれた」
小突かれる。
軽くだったからダメージはほぼない。
折れたのは廉士さんだった。