微温的ストレイシープ
「そんな、そんな……」
口を両手で押さえる。
そんなの、まるで。
「戦国時代みたい……」
「なんでちょっと興奮してんだ」
またしても小突かれそうになったけど、次こそは真剣白刃取りのごとく阻止をした。
そう何度もやられるほどわたしもバカじゃない。
それにしても、暴走族の世界って思ってたよりずっと複雑なんだな。
やられる前にやる。弱肉強食。
そんな世界なんだ。
「いつか世界中を旅してみたいなぁ」
「勝手にすれば」
「廉士さんと一緒に、」
「行かない」
即答。
絶対、聞かれるってわかってた早さだ。
難しい顔をしていた廉士さんが、ふいにふっと吹き出した。
「お前もたいがい頭おかしいよな」
まだ見たことない笑い方で、くしゃりとすこし子どもっぽくなる。
こっちの笑みのほうがずっと好きだった。