微温的ストレイシープ


「全国統一とか考えてないんですか?」

「序列1番はここ数十年不動だしな」

「下克上とか……」

「んな大きな野望はねーよ。あと戦国時代から離れろ」



野望がないのは廉士さんらしいけど、もっと上の猛者がいるってことだよね。


廉士さんだってじゅうぶん強いのに。

単に強さだけで決まるわけじゃないのかな。




「……廉士さんにとって、強さってなんですか?」

「またわけわかんねーことを」



それでも一応、考えてはくれているらしい。


しばらく宙を仰いでいた廉士さんは、取り出したタバコに火をつけた。




「え、ここで吸うんですか」

「じゃあどこで吸えって?」

「ほら、もっとひらけた場所とか。人がいない場所とか」

「“贅沢なことを言うな”」




細い煙は途中消えそうになりつつも、まっすぐ上に立ちのぼって闇に吸い込まれていく。


それを見つめていた廉士さんはどこか無機質を感じさせる口調でそう言った。


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