微温的ストレイシープ
「で、俺にとっての強さだっけ」
「いや、わからないなら大丈夫で……」
「強者は生きて、弱者は死ぬ。時代は変わっても世の常は変わんねーんだよ」
やっぱここも、お前の言うとおり戦国時代かもな。って。
あっけらかんと言ってのけたその姿は、ここにあるなによりも黒く深い海のように見えた。
大人びているというか、達観しているというか。
こんなこと絶対に口が裂けても言えないけど……
廉士さんも頭がおかしいと思った。
わたしと同じく、もしくはそれ以上に。
助けてくれた人にこんなこと思うわたしのほうが頭おかしいのかな。
香りに慣れることもなく、たまに小さく咳をながら。
しばらくのあいだ、白煙をくゆらす彼を見つめていたのだった。