微温的ストレイシープ


顔を近づけられて、目と鼻の先で舌なめずりをして。



き、気持ち悪い。

やだ、触らないで。




やめて……!


ぎゅっと目をつぶったときだった。





「ぐあっ!」



ドォン、と地面が揺れたのかと思った。

振動がびりびりと伝わってきて、あわてて目を開けて。




そこにいたのは去ったはずの彼だったから。



せまい路地に月明かりがさしこんで、その姿が淡く照らされる。


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