微温的ストレイシープ
そしてとうとう、ユキノさんのなかで整理がついたらしい。
話はわたしのことになって、
ユキノさんが話しはじめようとしたけど。
「……ちょ、っとまって」
彼女はそのまま頭を押さえ、うつむいてしまった。
「さっき泣きすぎたせいで頭いたいし、なんか、……やっぱ、口んなか?甘ったるい……」
だらりと長い髪を垂らして、机におでこがつきそうなくらい前のめりになっている。
「大丈夫ですか……?」
わたしが身を乗り出して、ユキノさんの様子をたしかめようとした瞬間だった。
──────カチャン、
その音はやけに大きく響いた。
何が起こったのかわからなかった。
気づいたときには。
顔をあげたユキノさんが、手にとったフォークを前につき出していた。
前……そう、
それは、わたしの目に向かっている。
「ユキノ!!」
すべてがスローモーションに見える世界で。
廉士さんの声を最後に──────
わたしの視界は暗転した。