スミレ色の手紙〜未来につながる愛〜
その日、本を読みながらローズはステファンの帰宅を待っていた。お腹を撫で、幸せそうに微笑んでいる。
ローズは今日病院に行き、妊娠していることがわかった。それを早くステファンに伝えたいと心が舞い踊っている。
ギイッとドアが開く音がした。ローズは玄関に向かい、「おかえりなさい!」と笑顔でステファンに言う。しかし、ステファンの顔はどこか暗かった。
「ステファン?」
首を傾げるローズの肩にステファンの手が置かれる。そして、ステファンは「すまない」と言い涙をこぼした。
「……来週、戦場に行くことが決まった。本当にすまない」
幸せな日々が崩れていく音がする。ローズの体が小刻みに震え始めた。戦場がどのような場所か、新聞で何度も目にしている。いくらこの国が強いとはいえ、亡くなっている人の数は少なくないのだ。
「……帰ってきてくれるの?」
ローズは涙をこぼし、訊ねる。お腹の中にいる子どももステファンをきっと必要としている。いなくなるなどあってほしくない。