スミレ色の手紙〜未来につながる愛〜
「必ず帰ると約束する。君を残して死ねない。だってこんなにも愛しているから……!」

ローズの口がステファンの口によって塞がれる。二人は泣きながら何度もキスを重ねた。キスの数が、いつもの日々より多いのは決して気のせいではない。

「ステファン……」

ほんの少し時間があるだけでも、二人は唇を重ねていた。

そして、ステファンが戦場に行く日はすぐにやって来た。ローズはいつもより早く起き、すでに軍服に着替えたステファンを見送る。妊娠していることは伝えていない。ステファンが帰ってきてから教えよう、そうローズは決めた。

「行ってくるよ」

ステファンはこれから戦場に行くとは思えないほど笑顔で言う。ローズは涙を堪え、「行ってらっしゃい。待っているから」と微笑んだ。

最後に交わしたキスは、二人の今までしたキスの中で一番甘くて長いものになった。



ステファンの帰りを、ローズはお腹の中にいる子どもと共に待ち続けた。

戦場に行ったステファンは手紙など出すことができない。ローズは毎日ステファンの無事を祈り続けていた。
< 13 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop