スミレ色の手紙〜未来につながる愛〜
ローズの頭上に広がる空を、一羽の大きな鳥が飛んでいく。その様子を見て、ローズはあの鳥になりたいと思うのだ。

お嬢様学校を卒業した生徒の進路は最初から決まっている。貴族や公爵との結婚だ。決められたことをし、決められた道を歩む。それがローズにとって嫌だった。

「あの鳥のように世界を旅することができたら……」

そうポツリと呟き、ローズは慌てて口を押さえる。そんなことを口にしてはならない。誰かに聞かれれば、ローズは間違いなく罰せられるだろう。なぜならーーー。

「この国はまた勝ったらしいな」

「ああ。どんどん敵国の軍を壊滅させていってるぜ!さすが世界一の軍隊を持つ国だ!」

タバコを吸いながら中年男性二人が新聞を片手に話している。そう、今世界は戦争の真っ只中。新聞には戦争のことしか書かれず、敵国に興味を持っただけで罰せられのだ。

「学校で学ぶことができるのは奇跡なのね……」

中年男性が持つ新聞には、戦争で破壊された街の写真が載せられていた。壊滅された街を見て、ローズは胸元を掴む。自国が戦争に勝っているというのに、喜ぶことなどできなかった。むしろ、苦しい。
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