スミレ色の手紙〜未来につながる愛〜
五分ほど歩いた頃、ローズの目の前に紫の花の大群が現れた。美しいスミレの花畑だ。ローズはこの場所を気に入っていて、苦しくなった時にここを訪れている。

「素敵だわ……。私もあなたたちみたいに自由に咲くことができたら……」

ローズはスミレ畑の中に座り、スミレに話しかける。穏やかな風にスミレが揺れた。

「……君も自由を求めてここに来たの?だったら仲間だ」

不意に話しかけられ、ローズはくるりと振り向く。すると木の陰で寝転びながら本を読む制服姿の男性がいた。その制服に見覚えがある。士官学校のものだ。そしてその本のタイトルを見て、ローズは「あなたそれ……!」と驚く。

「ああ、これ?東にあるどこの国の本だったかな?家の地下にあったから持って来たんだよ」

おかしい?と言いたげな目をする男性にローズは「敵国の本を読むなんて罰せられるどころじゃ済まないわよ!」と顔を真っ青にした。それでも男性は本を読み続ける。
< 5 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop