誰がための夜明け
誰がための夜明け
生きて生きて闘い抜けば、未来が切り開けると信じていた。
ひとり、ふたり、横にいた仲間が崩れ落ちていく。
その死を惜しむ間もなく、僕はひたすらに人を斬る。
何人も人を殺した。刀は刃こぼれして、もう使い物にならない。
それでも戦わなければ、死ぬのは自分だ。
鼻を掠める血の匂い。遠くで聞こえる砲弾の音。
ハァハァと吐き出す息は熱く、流れ出る汗が血走った目に染みた。
砂埃の中で、僕は必死にあの人の後ろ姿を探す。
「土方さん…!」
馬に乗った土方さんは、敵軍のひとりを刀で突き刺すと、ちらりとこちらに目をやった。
「なんだ」
「ここはもう無理です!味方も半数以上が殺られました!」
新政府軍の西洋銃に対して、旧幕府軍は刀剣。
明らかにこちらの分が悪く、戦況は悪化するばかりだった。
ここが落ちるのも時間の問題だ。
長く留まれば命を落とす。
「土方さ」
もう一度呼びかけて、言葉を止める。止めざるを得なかったと言うべきか。
腹部に鋭い痛みが走って、なぜ、と手をやった。その指先が赤く染まる。
「血……?」
「鉄!」
土方さんの怒鳴り声が聞える。僕はその場に崩れ落ち、痛みに体を丸めた。
僕は撃たれたらしかった。
視界がどんどん白く霞んでいく。
その中で、土方さんの体が不意に跳ね、馬上から転落していく姿を捉えた。
僕は声にならない悲鳴を上げて土を掻いた。
けれども身体には力が入らず、爪の中に土が入り込むだけだった。
待ってくれ。あのひとを連れていかないで。
ひとり、ふたり、横にいた仲間が崩れ落ちていく。
その死を惜しむ間もなく、僕はひたすらに人を斬る。
何人も人を殺した。刀は刃こぼれして、もう使い物にならない。
それでも戦わなければ、死ぬのは自分だ。
鼻を掠める血の匂い。遠くで聞こえる砲弾の音。
ハァハァと吐き出す息は熱く、流れ出る汗が血走った目に染みた。
砂埃の中で、僕は必死にあの人の後ろ姿を探す。
「土方さん…!」
馬に乗った土方さんは、敵軍のひとりを刀で突き刺すと、ちらりとこちらに目をやった。
「なんだ」
「ここはもう無理です!味方も半数以上が殺られました!」
新政府軍の西洋銃に対して、旧幕府軍は刀剣。
明らかにこちらの分が悪く、戦況は悪化するばかりだった。
ここが落ちるのも時間の問題だ。
長く留まれば命を落とす。
「土方さ」
もう一度呼びかけて、言葉を止める。止めざるを得なかったと言うべきか。
腹部に鋭い痛みが走って、なぜ、と手をやった。その指先が赤く染まる。
「血……?」
「鉄!」
土方さんの怒鳴り声が聞える。僕はその場に崩れ落ち、痛みに体を丸めた。
僕は撃たれたらしかった。
視界がどんどん白く霞んでいく。
その中で、土方さんの体が不意に跳ね、馬上から転落していく姿を捉えた。
僕は声にならない悲鳴を上げて土を掻いた。
けれども身体には力が入らず、爪の中に土が入り込むだけだった。
待ってくれ。あのひとを連れていかないで。
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