誰がための夜明け
翌日の早朝、僕は城を発った。
城を出る時、小窓から土方さんの姿が見えた気がして、僕は深く深く、頭を下げた。


「ご武運を」


もう一度顔を上げた時、土方さんの姿はそこになかった。


僕は歩き始める。
きっと二度と会うことのない彼の、最後の想いを届けるために、決して死んではならないと思った。


ふと頬に光が落ち、眩しさに目を細める。


「…あぁ、夜明けだ」


見上げた頭上に広がる空は高く澄み渡り、朝陽はその薄浅葱の中で確かな輝きを放っていた。


それはまるで、夜明けを願った全ての人々の祈りのようであった。
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