笑顔のキミを


「咲良・・・」


そのときだった。

聞き覚えのある声が、正確には、ついさっき表彰式のときに聞いた声がした。


彼は、神谷凛斗は、ただ一度、大好きだったはずの彼女の名前を呟いただけだった。

そのあとはそのままでていった。

わたしもそのあとを追って、この部屋をでた。

もう一度白い布をかぶされた咲良に手を合わせて。



彼は、その部屋をでてすぐのベンチに座っていた。

さっき、あの表彰台にたっていた彼とはまるで別人だ。

あんなに緊張していて、でも必死に喋ろうと頑張っていた彼はいない。

きっと頭の中で理解できていないんだろう。

わたしや、咲良の両親たちと同じように。

いや、それ以上かもしれない。
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