笑顔のキミを
「あ、自己紹介してなかったね。高崎ナナ。よろしくね」
そこに置いてあった紙にわざわざ書いた。
理由は特にない。
ただナナがカタカナだってこと結構知らない人多いし、凛斗くんには知っててほしかった。
平仮名でも漢字でもないということを。
自分の名前を、知っていてほしかった。
「神谷凛斗です。よろしく」
「うん、知ってる」
「ナナさんは、本当にこの部活に入るつもりですか?」
「もう!だから堅苦しいんだってば!ナナでいいよ、ナナで。あ、わたしも凛斗でいい?」
いいながら、ドキドキしてた。
男の人を呼び捨てにするなんて、別にどうってことないのに。
今目の前にいる人は、わたしを変えてくれた人だから。大切な人だから。好きな人だから。
ナナって呼んでほしい。
でもそれだときっと凛斗くんは納得しない。
だからわたしもそう呼ぶ。
そうすれば、対等な関係でいられる。
先輩後輩とか、一つ上とか下とかそんなの何も関係なくいられる。