笑顔のキミを
精神安定剤
*
「ただいま」
「おかえり。ずいぶん遅かったわね?また写真?」
「そう」
「写真もいいけど、勉強もちゃんとやってるの?」
「やってるよ」
「ならいいけど。早く手洗ってきちゃいなさい」
俺の両親は、俺が写真をやることに反対だ。
プロのカメラマンなんて成功しない。
なれるひとなんて一握り。
だから写真はあくまでも趣味。
昔は、俺が表彰されたら喜んでいたのに。
昔は、俺がプロのカメラマンになることに賛成だったのに。
いつからか反対するようになった。
いや、いつからかなんてわかってる。
あのときから、あのとき俺が人の写真を撮れなくなったときから。
反対するのは、俺のため。
そんなこともわかってるつもり。