笑顔のキミを
「今日はテニス部はお休みですか?」
「いや、梶原先生にまかせてきたよ」
たしか梶原先生は副顧問。まだ若い女の先生だ。
「なんかすいません」
「なんで神谷が謝る?」
「いや、なんでここまでしてくれるのかなって」
「神谷、お前それいうの何回目だ?俺は写真部の顧問でもあるっていってるだろう?」
「そうはいってくれてますけど、でもやっぱり気になるんですよね。つぶそうと思えばつぶせたじゃないですか。去年は俺しかいなかったわけですし。藤森先生がそういってくれるのはすごく嬉しいけど、でもいまでも不思議に思ってます」
「つぶそうとなんて一度も思わなかったさ。でもたしかにひとつ神谷にいってなかったことがある」
「なんですか?」
「神谷は昔の俺みたいでほっとけなかったんだよ」
それははじめて聞く先生の過去の話だった。