笑顔のキミを
もやもやした気持ち
<ナナside>
「ごほっ、ごほっ」
最近咳をすることが増えた。
小さい頃から喘息持ち。
そのため薬と吸入器を常に持ち歩き、運動も全然できなかった。
それでもわたしは普通の人でいたかった。
まわりから特別扱いされたくなくて黙っていた。
わたしは昔から、そして今もずっと普通の女の子として生きていたかった。
「ナナちゃん、そろそろ撮影するよー」
「はーい」
モデルの仕事はすごく楽しい。
自分が写真を撮るようになってから、カメラマンってすごい仕事なんだとわかったからなおさら気合が入る。
このときだけわたしはほんの少しだけ特別になる。
自分は一番かわいい女の子だと思ってなりきる。
集中しているとなぜだかずっと止まらなかった咳がとまる。
撮影中わたしは自分が喘息持ちだということを忘れられる。
特別だけど、普通の女の子。まさにそんな感じになれた。