笑顔のキミを


お母さんは昔からわたしに謝ってばっかりだった。

全速力で走れなくて泣いたとき、息が苦しくなって泣いたとき、みんなと同じように運動ができなかったとき、なんでわたしはこんな体なのと泣いたとき、お母さんはいつも自分を責めていた。

こんな体に産んでごめんねと。

そしていまも自分を責めてる。

倒れたのはわたしの自己管理問題なのに、自分のせいだと思っている。



「わたしね、今すごく楽しくて。それを言い訳にしてた。自分は大丈夫だって言い聞かせて、無理してた」

「ナナ・・・」

「お母さんのせいじゃない。お母さんは何一つ悪くない」

「っ、でも、あなたをこんな風に産んで・・・」

「わたしなにも後悔してないよ。喘息でつらいことたくさんあったけど、でもその分楽しいこともたくさんあったから。ねえお母さん。わたしを産んでくれてありがとね」

お母さんは顔に手をやり涙を流した。

お母さんの泣き顔をみるのははじめてだった。
< 296 / 390 >

この作品をシェア

pagetop