笑顔のキミを


「わたし凛斗に会いたくてここにきた」

「俺に?」


一気に話したせいで息がつらくなっていったん水を飲む。

もうだいぶ安定したとはいえここで咳がまた復活してしまったら退院が遠のいてしまう。

でもそのあとも凛斗の顔をみれなくて、凛斗が途中で口をはさむのが怖くて、結局一気に喋った。



「俺はナナに会えてよかった。探しにきてくれてありがとう」

ねえ、その一言でわたしがどれだけ救われたか凛斗は想像できる?


「ナナはずっと俺の隣で笑ってくれてたらいいから」

「うん。そうさせてもらいます」


不思議だね。

さっきまで怖くて不安でいっぱいだったのに、もう泣かないと決めたのにその決意が揺るぎそうなくらい泣きそうだったのに、いまはこんなにも笑ってる。


あの日交わした約束は必ず守るよ。これからもずっと。


凛斗が向けてくれるカメラの前でも、そうじゃない普段の何気ないときでも。


わたしは凛斗の前で笑うからね。

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