笑顔のキミを


パシャ


顔をあげると、いつの間にか繋がれた手がほどかれていてナナがカメラをこっちに向けていた。


「今、俺どんな顔してた?」

「うーん。難しい顔?」

「なんで撮ったの」

「かっこいいなって思ったから」


ずるいな。簡単に俺の心を持っていく。


ナナにはずっと勝てない気がする。

俺はかっこいい言葉も、甘い言葉もいってあげられない。

心では思っててもいざ言葉にしようとするとたった数文字の言葉さえでてこない。



「ほら、いこ?」

差し出された手。

いつもは普通の手繋ぎ。

でも俺は恋人繋ぎというものをしてみた。

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