笑顔のキミを


「よし、じゃあ今日は外にでもいこっか」

「外ですか?」

「うん。冬の海。いってみたくない?」


去年ひとりだったときもこの時期になるとよくいっていた。

夏の海と違って人もいなくて、冷たくて荒れていて。

でもそんな海を眺めるのが好きだった。



「寒いですね」

「うん。水に近い場所だから余計ね」


千夏ちゃんは手袋をはめてなくて手を必死にこすりあわせていた。


「これはめて」

「いや、いいですよ」

「俺のわがままでここに連れてきちゃたしさ。風邪ひかれても嫌だし。ね?」

「・・・はい。ありがとうございます」


沈黙が流れた。

写真を撮るわけでもなくただ荒れる海を2人して静かに眺めていた。
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