笑顔のキミを
「はい、笑って」
「俺を撮るの?」
「うん。え?ほかに何を撮るの?」
不思議そうに首を傾けてそう問うナナ。
「俺は、風景しか撮らないんだ。夕日とか月とか、花とか、そこら中に広がっている、綺麗な景色しか」
「・・・人は、撮らないの?」
「撮らない」
「ふーん、そうなんだ」
意外だった。
きっと深く聞かれると思ったのに。
俺に向けていたカメラを下げて「じゃあ外にいこうよ」といった。
「聞かないんだ」
「聞いてほしいの?」
「いや、聞いてほしくない」
「なら、聞かない」
本当にどうでもいいと思っているのか、興味がないだけなのか、それとも俺のことを気にして聞かないのかわからない。
ただ、それがすごくありがたかった。