笑顔のキミを


「はい、笑って」

「俺を撮るの?」

「うん。え?ほかに何を撮るの?」

不思議そうに首を傾けてそう問うナナ。


「俺は、風景しか撮らないんだ。夕日とか月とか、花とか、そこら中に広がっている、綺麗な景色しか」

「・・・人は、撮らないの?」

「撮らない」

「ふーん、そうなんだ」


意外だった。

きっと深く聞かれると思ったのに。

俺に向けていたカメラを下げて「じゃあ外にいこうよ」といった。


「聞かないんだ」

「聞いてほしいの?」

「いや、聞いてほしくない」

「なら、聞かない」


本当にどうでもいいと思っているのか、興味がないだけなのか、それとも俺のことを気にして聞かないのかわからない。

ただ、それがすごくありがたかった。


< 35 / 390 >

この作品をシェア

pagetop