笑顔のキミを


「でも先輩の写真見たときなんかどうでもよくなったんですよね。全部が。バカバカしくなったんです。そんなんでくよくよしている自分が」

「・・・あの写真は、俺にとっても宝物なんだ」

「わかります。彼女は、この人にとってきっと特別な存在なんだろうなってわかりました。わたしも、こんな写真を撮れるようになりたいと思いました。だからこの学校に入りました。先輩に会うために」


ナナがいっていたことは間違っていなかったらしい。

好きかどうかはわからないけど、でも千夏ちゃんにとって俺はそんな存在だったんだってことはわかる。


「あの写真をみた次の日から、わたしは変わりました。いじめていた子たちなんて本当にどうでもよくて。わたし強くなりたかった。変わりたかった。ただ、誰かの大切な人に、写真の方のように愛されてみたかった」

「千夏ちゃん・・・」

「しばらくは普通にいじめられたんですけど、いつの間にか嘘のようになくなりました。あのときは嬉しかったな、なんか自分少しは変われたのかもって思って」


強いなあ。

千夏ちゃんは強い。

俺なんかより、よっぽど。

カメラを持ったこの子は、もしかしたらとてもすごい写真を撮るかもしれない。


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