超人気シンガーの正体、実は高校生地味子です。
1章:
兄も凄いが妹もそれなりだったりする
「ふああ〜…おは──…」
「〜〜♪ 〜〜〜♪〜」
私の朝の第一声は、兄の鼻歌によってかき消された。
「お兄ちゃん…何、歌ってんの。」
「ん?
おお! 結衣!
今日も朝から可愛いな!」
「…もう。
朝からデレ発言やめてよ?
あと、その曲まだ発表してないんだから、外で歌ったらダメだよ。」
朝からシスコン全開のお兄ちゃん。
このノリにももう慣れてしまった。
それでも、お兄ちゃんの顔が相変わらずイケメンってのが気に入らない。 寝起きでそのクオリティは嫌味にしか見えない。
「ばっか、お前…
俺がお前に迷惑かける事をすると思うか?そんなことしちゃったら俺生きてけない。死ぬよ?」
「え?
お兄ちゃんは迷惑の塊だよ?」
「またまたぁ〜
今日のツンデレも可愛いぞ!」
「ほんと、ツンデレじゃないから。やめてくれない?」
お兄ちゃんに迷惑をかけられたことなんて、両手両足を使って数えても収まらない。
昔一緒に出かけた時も、お兄ちゃんのせいでろくに楽しめなかったし。
その理由は、お兄ちゃんの職業に関わるわけだけど…
「お…
結衣、テレビつけろ! 始まるぞ」
「わ、ほんとだもう7時だね」
私たちのお目当ては、7時から始まるテレビ番組。
そのテレビ番組は、月曜日に毎週放送され、1週間のうちに活躍した人物をランキング形式で紹介するのだが…
「2位は、俳優『九重 青葉』さん!
1位は、 ミュージシャン「ツクモ」です!」
「ああああああああ!!!くっそ負けた!」
お兄ちゃんは悔しがり、私はそんな兄を見てフフンと笑った。
「やったぁ!
今週は私の勝ち〜」
「…くそぉ…俺が……皿洗いしないといけないのか…」
「じゃあ、来週まで家事よろしくね!」
私はポンポンとお兄ちゃんの方を叩く。
この兄妹対決のルールは簡単。
ランキングで「九重 青葉」が勝てば私、「ツクモ」が勝てばお兄ちゃんが1週間家事をする。
ちなみにお父さんは単身赴任をしていて、そんな父にゾッコンなお母さんは単身赴任に着いて行ってるから、滅多に家にはかえってこない。
私は爽快な笑顔で、ヒラヒラとお兄ちゃんに向かって手を振る。
「こうなったら、 明日の晩にでもインスタライブをするか…?
そうすれば来週こそは…!!」
「水曜日、新曲発表するけど」
「ぐはぁっ…」
そのまま、お兄ちゃんは机に倒れ込んでいった。