超人気シンガーの正体、実は高校生地味子です。
ミュージシャンの「ツクモ」は、日本に限らず世界にも人気を誇る人物だ。
彼女が作詞作曲した独創的な世界観の曲で、ファンを魅了する。
そのツクモの正体は、紛れもなくこの私。
〝九重 結衣〟(ここのえ ゆい) である。
そしてその兄は、〝九重 青葉〟(ここのえ あおば) 。超人気俳優。
しかし、ツクモは本名も年齢さえも公開していないため、謎に包まれ、色々な噂が飛び交うほどだ。
──もちろん、2人が兄妹であることなど、以ての外。
そんな超有名人は、人知れず毎日を過ごすのだった。
学校までは、電車で30分。
始発駅から乗るし、結構快適な登下校ができる。
(そういえば今日は小テストだったっけ…)
私はバックから英単語帳を取り出す。
パラパラとページをめくって、付箋で印をつけていたテスト範囲のページを開く。
“crescent : 三日月”
あ、次のアルバムの名前、crescentにしようかな…
自分でも思うけど、私は結構な気分屋だ。
曲名や歌詞もコロコロ変えるし、それでマネージャーを困らせたことも多かったりする。
その行動の源にあるのは、やはり自分自身への自信の無さだろう。
私はミュージシャンとして売れ、今のところ成功していると言ってもいいと思う。
けれど、今まで散々ヒットしながらも、業界から消えていった芸能人たちを何人も見ている。
それに、私の曲は相当独創的なものだと自分でも思うから、ファンの好き嫌いに偏りができてしまうことは明確だ。
プシュ~~~
電車が止まった。
色々考えているうちに、着いてしまったみたいだ。
あ、単語全然覚えてない…