超人気シンガーの正体、実は高校生地味子です。
小走りで学校までの道を走る。
腕時計を見ると、7時46分と映し出されている。
HRは8時からだから、結構ギリギリな時間だ。
なんでこんな時間に登校しているのかと言えば、ただ私が学校嫌いなだけ。
いや、学校が嫌いな訳では無いかな。
私が嫌いなのは、あの教室。クラスメイト。
お母さんとの高校までしっかり卒業するという約束がなかったら、こんなとこさっさと出ていきたいくらいだ。
ちょこちょこと走って、教室までたどり着いた。
ドアの前まで来て、腕時計を確認。
7時57分
一応間に合った。
ガラガラッ
教室のドアを開けると、少し古びた校舎だからか大きめの音が鳴る。
中には、先生がもう居た。
…全くこの担任は……来るの早すぎ。
「…九重さん?
最近来るのが少し遅いんじゃないの?」
薄化粧をして、黒髪を後ろでひとつにまとめている女性教師は、私が教室に入るや否や小言を呟く。
私が遅いんじゃない、先生が早いんです。
そんなことを言いたいけれど、言えるはずもなく…
「…すみません」
ボソボソと小さい声で返事をして、私は席に移動する。
周りからは忍び笑いが聞こえる。
今日も憂鬱な学校が始まってしまった。どうにか、寝てやり過ごそう…と、私は今まで何度も心に唱えてきた誓いを今日もするのだった。