君がいなくてもnatuはもう一度
第五章 優しい花が散るころに。 

僕たちの旅行が終わって一か月がたち、次に待っていたのは学園祭だった。毎年2年生は屋台をするという習わしがあるらしかった。6時間目はクラスで何の出し物をするか話し合っていた。
「んー。私たちはどんな意見を発表しようかね。意見ある人!」
雪乃が僕たちに意見を求めてきた。班で一つに意見を絞り、それを司会の先生に発表するというものだった。
「俺は、たこ焼きかなぁ~。この前食べて美味しかったお好み焼きを作るっていうのもいいね。もしくは・・・焼きそばとかかなぁ。」
「それ中野が食べたいものでしょ。絶対。」
「あ、ばれた?あははは。」
なんて二人で話し合っていた。僕はそんなのどうでもいいんでほぼ任せていた。恒例のように中野が、我先にと意見を出してくれるのでそれに乗っかればいいと思っていた。
「あのねぇ。クラスで出す物は一つに絞らないとダメなんだよね。」
なんて二人は会話していたが佐倉は上の空だった。仕方なく僕が早く終わらせたかったので発言した。
「僕は中野の意見の焼きそばに一票かな。去年の売り上げランキング一位なんだろ?それが妥当なんじゃないか?」
「んー。焼きそばねぇ。焼きそばかぁ。いいんだけどさぁ。焼きそばねぇ・・・」
「じゃあ雪乃は何がやりだいんだよぉー?」
中野が呆れながら言った。すると、雪乃は思いがけないものを言った。
「私はね。チーズハットグでもどうかなって思ったんだけど?どう!?」
「え?マジで言ってんの?」「なんかめんどくさそうな気がしますが・・・。」「何か作るのだるそう。」
雪乃は3人に文句を言われさすがにひるんだ。「え?よくない?」と文句を言いたそうな顔もした。
「俺は、こんなかで言うと焼きそば食べたいから焼きそばかな。なんだか成瀬に言われてなおさら食いたくなった。」
「僕は、さっき言った通り焼きそば。こういうのは奇をてらわないほうが最善だろ。」
と、2人一致で焼きそばに投票したため、雪乃はさすがに押されたのか
「わかりましたーよ。焼きそばね。じゃあ焼きそばで提出しますよ。絶対チーズハットグのほうがいいと思う・・・・。」
なんてことになり結局僕たちの班は焼きそばになり、クラスの他の班も焼きそばを提案していた班がいたらしいので僕たちのクラスは焼きそばになった。
みんなは最優秀店舗を目出すために各々何か意見などをそのあとクラスで話あったが僕は相変わらず興味がまったくなかったので、一人スマホをいじっていた。
もう来週は学園祭か。この学校はたしかに行事が多いと改めて思った。
僕にはこの学校にはなんだか合っていないかもと思った。そしてあっという間に日にちは過ぎていって、学園祭の3日前の日に出来事は起こった。
その日は佐倉は学校に来ていなかった。実は、あの日から佐倉は学校に来ていなかった。どうしたんだ?などのメールを社交辞令みたいな物と、自分で割り振って送っていたが返されたのは衝撃的な事実だった。
〉〉私、もう学校いけない。
は?と一瞬何を書かれていたのかわからなかった。しばらく呆然としていたが段々内容が頭にインプットしだした。
〉〉それどういうことだ?詳しく教えろよ。
なんでこんなに自分が焦っているように言っているのかわからなかったが、胸の奥がざわついていたことだけははっきりと分かった。
〉〉私、もう病院から出られないみたい・・・。ごめんね、成瀬君。
病院?僕は理解ができなかった。こないだまで僕にさんざん自惚れてきたじゃないか。すると僕の中の忘れていた記憶が鮮明に蘇った。前に一緒に言った花火大会は5月。そしてこの学園祭は・・・9月だった。もう半年じゃないか。なんだか僕は、奇妙な喪失感におそわれ焦りなからメールを送った。
〉〉おい。どこの病院にいる。どうせ退屈だろ。会いに行ってやるよ。どこの病院?
そのメールは既読が付いてはいたが、返されることはなかった。僕は何回もメールを送った。なんだか僕が佐倉みたくなっていて自分でも笑えた。それからも、何度も何度もメールを送った。しかし僕のスマホに返信されることはなかった。
そして、あっという間に3日間が過ぎてしまった。この3日間の記憶はあまりない。もちろん授業なんて頭に入らなかった。僕の目には隣で空いた空席に目がほぼ向けられていた。自分はどうしてしまったんだろうか。僕は僕自身のおかしさに気づいてはいたがその原因は、こないだの旅行からだろう。
「成瀬。最近お前焦ってる感じするよ?大丈夫か?なんか俺にできることあるなら言ってくれてもいいんだぜ?俺はお前の友達だかんな!」
中野が僕を気遣ってか、そんな言葉をかけてくれた。やっぱりこいつはいいやつだなと改めて思った。中野は困っている人は放ってはおけないみたいタイプなのでみんなから信頼されている奴だった。僕とは正反対なので、なんで中野がこんな奴と友達なんだと一時期、噂みたいなのが飛んでいたが、中野はそんなん気にしないで僕に話しかけてくれたのだ。僕の唯一の信用できる人といっても過言ではない。
「ああ。大丈夫だ。ほら、顔色もこの通りいいだろ?:
「全然よくないんだけど。もしかして・・・お前佐倉さんのこと気にしてんのか?」
「は?んなわけねーよ。そんなことはない・・・。」
「嘘つけ。お前の顔はそんな顔してないだろ。佐倉さん、中央病院に入院しているらしいぞ。俺のお母さん看護師やってっから。お見舞いでもいってこいよ。お前の分の仕事は任せとけ。っていうかお前なんにもなかったな仕事。とりあえず気にすんな。お前のことは任せとけ。」
こいつは本当に優しすぎる。なぜ見返りもないのにこんな僕に優しくしてくれるのだろうか。さらに新品のお茶の入ったペットボトルまでくれた。おそらく僕は今までうれしかったランキングで3位以内にはこいつとのエピソードが入るだろうなと考えた。
「そうか。ありがとな中野。そういえばお前に一つ言っておかないといけない重大なことがある。
「なんだ?そんな真剣に。」
「お前は一番の親友だよ。ありがとな。」
そう僕が言うと中野は照れたように僕に向かって言い返した。
「俺もそうだがな。お前には気を使わなくていいからな。それだけではないけどな、頑張れよ俺の親友。佐倉さんはお前のことを待っている。
ああ、と言い返して僕は中央病院に向かった。学校からさほど遠くないので10分もあれば付いた。佐倉は最上階の部屋に入院しているようだった。
いざ、部屋の前に立つとあの旅行のことが蘇る。考える前に行動に移した。ドアを二回ノックして返事があったのでドアを開けた。
「な、成瀬君なんで?今日学園祭でしょ。それになんで病院わかったの?」
「そのくらいわかる。ここにいる気がしたから。」
自分でも何言っているのかわからなかった。
「佐倉。聞いてくれ、あの旅行での雰囲気を引きづりたくないんだ。」
佐倉は無言で黙って聞いていてくれた。
「あの時は何も言えなくてごめん。困惑してたんだ、きっと。結論から言う。僕は佐倉とまだまだ会いたい。あの時佐倉が支えてくれたように今度は僕が支えるよ。だからさ。これ。お茶上げるよ。」
佐倉は困惑している様子だった。自分でも顔が焼けるように暑かった。おそらく人生で一番恥ずかしいことを言ったであろう。
「うん!ありがとう。私はここで待ってるね。あ、あれ?おかしいな」
と言って佐倉は涙を流しながら笑っていた。それから佐倉の涙は全然止まらなかった。だから今度は僕が言ってあげた。
「はい。ハンカチ」と佐倉は泣きながら微笑んでありがとう、と言った。
「じゃあさ。約束しようよ。」
僕は不思議に思って聞いた。
「ん?何?」
「私はもう長くないです。体がそう言ってるんだ。それにこの学園祭。毎日私のところに来てね。待ってるからさ。」
「ああ。それらいならたやすい御用だ。待っててよ。」
そう僕は元気よく優花に言った。それから僕は学園祭の3日間佐倉優花の病室に訪れた。そして、学園祭最終日は雪乃と中野が一緒に佐倉の病室へお見舞いに行きたいと言ったので行くことになった。
「こんちは~。久しぶりだね佐倉さん。」
「お、お邪魔します。」
と、対照的な反応を二人は見せて病室へ入っていった。僕はこの3日間来ていたのでなんともなかったが。
よ、と佐倉に言ったが佐倉は僕を見るなり微笑んできた。そして佐倉の目線は雪乃の持ってるビニール袋に注がれた。
「はい!屋台の食べ物とか買ってきたからみんなで食べようか。中野ー箸ちょうだい。」
「おっけー。はい、佐倉さんの。成瀬もほらっ。」
僕に屈託のない笑顔を向けて箸を渡してきた。僕はお礼を言って受け取り机に目をやった。
たこ焼きや、お好み焼き、焼きそばなど色々買ってきた。ちなみに金は中野が佐倉さんのためなら、と言ってほぼ出してくれた。お好み焼きは僕のチョイスできっと佐倉もわかってるだろう。
「みんな、ありがと。ちょうどお腹すいてたんだ。成瀬君ちっとも買ってくれなかったから気になってたんだ。」
佐倉は僕を見ながら言ってきた。
「そりゃー悪かったな。」
僕がそう言うと佐倉は、結局食べれるからいいけどと言ってお好み焼きに手を伸ばした。それから僕たちは、最近学校で起きたことなどを話したりして夜まで楽しんだ。
「それじゃあまたね。」
「じゃあね!佐倉さん!また来るよ!」
雪乃と中野はそう言って部屋をそろって出て僕も帰ろうと2人の後ろについていき、佐倉のほうを見た。目が合って表情を見るとなんだか言いたそうにしていることがわかった。
「ふー楽しかったねー。佐倉さん元気そうでよかったね。」
そう言って、雪乃と中野と別れた。僕は再び来た道を戻り、数分前に訪れた部屋をもう一度訪れた。
「やっぱり、伝わってたんだね。よかったよかった。」
「あの目線でなんとなくは察したよ。あのまんま帰ってもよかったんだけどあいにく雨が降り出してね。あと、これ。なんか空から降ってきたから上げる。」
実は学園祭最終日に中野に佐倉が誕生日だということを教えてもらったので、花屋によって花を買ってきた。
「え。なんか成瀬君らしくないね。てかなんで?いきなりこんなの?」
「自分の誕生日忘れたの?てかこれの花言葉一応聞くけど知らないよね・・・?」
「んー。この花多分ダリアだよね。でも、さすがに花言葉は知らないかなぁ。で?花言葉何?」
普通にダリアということを知ってるのは意外だった。ダリアの花言葉は・・・そんなこと思ってないので言わない。
「さぁ?たしかなかったような・・・。」
「へー。で?成瀬君は私に何を感謝してるのかな?」
僕は佐倉は花とかそういう風情のあるものには興味がないと思っていたのでてっきり油断した。
「知ってるのかよ。以外だな。じゃそうゆうことで帰るね。」
「以外は余計だなぁ~。で?逃がさないよ。」
僕はそう言われて観念して本当のことを言うことにした。正直めちゃくちゃ恥ずかしかった。
「最近、あいつらといることが楽しくなった気がするんだ。それは多分・・・佐倉と出会ったからだと思っただけ。少なくとも。以外だったのはあの頃の佐倉が今ではこんなふうになってるとは思いもしなかったけどね。それに旅行に行ったときはなんだかんだ奢ってもらったりしたからね。そのお礼も含んでる。」
「へぇー。あの成瀬君の口からこんなにも素晴らしい言葉を聞けるとは思ってもいなかったよ。つまり、人と会話するのが無駄じゃないって気づいたんだね。私のおかげで。」
「んー。まあそんなもんじゃね。私のおかげって自分で言うのはどうかと思うけど。間違ってないから何も言えないが。」
すると佐倉は机の引き出しから、一冊のノートを取り出した。
「これさ。私の遺書。それと私がしたかったことも書いてある。私がもし死んだらこれは成瀬君に託すよ。やっぱり成瀬君にあげたい。」
「それ中身書いたの?もう。」
「書いたよ。私はもう長くないことも知ってるし。」
僕は返事をしなかった。もう長くない。佐倉ははっきりと口にした。そんな僕を見ていた佐倉が言った。
「でもさ。もう成瀬君は成長したよ。少なくとも私が会ったときとの目と今の日常の目は全然違う。なんか楽しそ。」
「ああ。そうだな。否定はしない。佐倉はもう長くないのか?」
僕は遠慮もしないで佐倉に告げた。佐倉になんだか遠慮するのは間違ってる気がしたからだ。
「うん。もう体がなんかついて行ってない。おそらく一週間もないね。あーあ。なんだか楽しかったな、成瀬君と出会えて。」
佐倉は明日にも本当に死んでしまう顔でそう言った。なんだか佐倉がいない日常は想像つかなくなっていた。
「成瀬君。大丈夫?泣いてるよ。」
「えっ。嘘。」
僕は自分でも泣いているのを気が付いていなかった。なんだか佐倉がいない日常を想像すると涙が自然と出てしまった。
「きっと目にゴミでも入ったんじゃない?はい。ティッシュ。」
「ありがと。でも目にゴミは入ってない。佐倉がいない日常を考えたらなんだか涙が出た。おかしいよな。ごめん。」
「別に謝んないで。でも、いつかは私はいなくなる。それでも成瀬君は元気でいてほしいな。あ、そうだ。約束しようよ。」
僕はすぐ承諾して内容を聞いた。もう涙なんて止まらなくていいと思ってしまっていた。
「私がこの世からいなくなっても笑顔を絶やさないこと。人を好きになること。いい?永遠の約束ね。」
佐倉は震えている小指を僕に向かって差し出してきた。僕は「もちろん大丈夫だ。約束するよ。」と笑顔で言った。
「よかった。ありがと。」
いつのまにか面会終了時間になっていた。佐倉は帰り際に僕に向かって言ってきた。
「改めてありがと。成瀬海斗君。好きだよ。」
これが一人部屋だったからよかった。大人数部屋だったら恥ずかしさで倒れるところだった。僕も佐倉に向かって声を張り上げていった。
「その人は光栄だろうね。人をこんなにも変わらせた佐倉が好きになるんだから。きっとその成瀬海斗はいい人なんだね。」
佐倉は泣きながら僕に微笑んでいた。元気よく手を振っていたので僕も佐倉に控えめに手を振り返した。
ありがとな。改めて佐倉優花に心の中でお礼を言って病室を後にした。

その1日後、深夜に電話が鳴った。夜中だったので目は半開きの状態で電話に出た。
「はい?どなたですか?」
「すみません。優花の父です。優花が最後に君に会いたいと。来てくれませんか、お願いします。」
僕は秒も見たないうちに承諾した。そしてすぐにタクシーを呼んで置き、着替えた。兄からは何してんだと言われたが、僕の焦りようを見て、お父さんの対応は任せておけ、と言われた。僕はありがとうと言い、玄関を出て、タクシーに乗り込み大きな声で中央病院まで急いでお願いします。と言った。
3000円を置き、すぐ佐倉の最上階の病室へと向かった。僕がドアを開けると、大人が二人ベットの端っこに座り込んでいて、大学生くらいの人もいた。
それは両親と佐倉の兄だということは少し時間がたってから気が付いた。佐倉の兄は僕に気づいたらしく鳴きながら説明してくれた。
佐倉は、先ほどまで生きていたということ。最後に成瀬君に会いたいということで佐倉の父親が僕を呼んだということ。そのあと僕は両親にご挨拶をした。僕の名前を聞くなり佐倉の父親が、
「そうか。君だったのか。本当に優花と仲良くしてくれてありがとう。心から感謝する。」
と、頭を下げられたので僕も頭をさげ返した。今は家族だけのほうがいいと思って、僕は帰ることを佐倉の兄に伝えた。すると、佐倉の兄に呼び止められ、
「これ。多分君に充ててだと思う。このノート。すまなかったね。もう少し早く読んでいれば。
後悔しているように佐倉の兄が言った。これから葬儀などいろいろ大変だと思うのでなるべく楽にしてあげたかった。」
「いえ。生きてるうちにたくさん話しましたから。それにこちらこそ楽しい日常をありがとうございました。」
僕はそう一言言ってまだ暖かかった病室を後にした。ここから家は小一時間ほど掛かるが、歩いて帰りたい気分だった。
僕はそのノートに見覚えがあった。歩いて帰りながらそのノートを読んだ。それは彼女の遺書とやりたいこと、僕に向けてのメッセージだった。自然と涙はまったくというほど出てなかった。

遺書。って言ってもどうせ見てるのは成瀬君でしょ?私が成瀬君に渡してって言ったから。じゃあこれは成瀬君に向けての言葉だね。じゃ書きます。
えっと。まず成瀬君のことは一目じゃあ思い出せなかったかな。夕日海斗君だと気づいたのは成瀬君が私に自己紹介してくれたから。びっくりした。転校してまさかこんな偶然が起きるなんて、と思った。成長した成瀬君の第一印象知りたい??w根暗。人に興味なさそう。今にも死にそうな目してる。本当に君はこうだったよ?失礼だけど。まあ成瀬君なら許してくれるよね。
それからの毎日は本当に本当に楽しかった。買い物いったり、広島に旅行行ったり。もう私は病気で絶望していてま位置にがつまらなかったから。君は私のおかげで日常が楽しくなった、とか言ってたよね。私もだよ。君がいたから私も楽しかった。とてつもないくらいに。昨日した約束覚えてる?まあ忘れるわけないか・・・ないよね?きっと君なら覚えてるよ。私ならわかる。あとは事務連絡。このノートは君の好きにしてください。捨ててもいいし。家族には私からこのノートは成瀬海斗っていう人にあげてねっていってるから。おそらくこれを読んでる人は成瀬君だ。さーてと。もっと書きたいけど君はめんどくさいとか言って読むのをやめちゃいそうだからここらへんで終わるかな。本当にありがとう。成瀬君。もっと君とはいろんな場所に行きたかった、同じ時間をもっと共有したかった、ずっと話していたかった。でも、もうそれはかないません。でもね。成瀬君。私との日々は忘れられないかけがえのないものだと思います。おそらく。きっとね?だからさ。つらいことがあったらこのノートを見て私との日々を思い出してほしいな。たまにでいいよ。いつまでも一人は寂しーよ?彼女を作ってくれることを願う。あ、あとこのノートを見て泣かないこと。君は笑顔が一番だから。約束に付け足してね。それじゃあこの辺で。先にいってまってるよ。君に心からの感謝の気持ちを送るのとこれから君が元気でいることを心から願ってます。

僕は泣いていた。自然と涙が出てきたという表現が正しいのかもしれない。佐倉との約束を示されてから一分もたたないうちに破ってしまった。でも、これは破ってもなんだか許してもらえると思った。僕たちが互いにまたあえると確信したときのよう感じがしたからだ。佐倉が死んだという実感がだんだん湧いてきたが、僕は暗い気持ちなどにはならなかった。むしろ明日何しようか、そういえば佐倉がしたいことがこのノートに書かれているんだったな、それを実行してもいいか、など思っていた。明日何したらいいか、など佐倉と会うまでは考えていなかった。道路にだんだん光が差し込んで朝日が顔を出すとき、弱弱しい風が手に乗っているノートの一ページをめくった、

PS.もしこのノートを見て泣いたら、成瀬君はきっといい人なんだろうね。だってこんなめんどくさい私のために泣いてくれたのだから。成瀬君。頑張って。つらいときは泣いてもいいんだよ。それはきっと明日へつながる涙だから。そして、その涙は成瀬君を笑顔にしてくれるはず。一見人から見たら何言ってるのかわからないと思うけど、成瀬君ならきっとわかるはず。成瀬海斗!頑張れ!いつかはわからないけどまた海斗とは会えそうな気がするよ。一緒に同じ時を過ごしてくれてありがとう。
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