東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18
止めどなく溢れる感動を胸に、叶星は急ぎ足でエレベーターに乗って、やれやれと一息ついた。

――ここからは現実。一般人らしく働きましょうかねぇ。


「挨拶もなしか」

聞き覚えのある声にギョッとして振り返ると、そこにいたのは東堂副社長。

気がつけばエレベーターの中にいるのは二人きり。
どうやら自分の世界に入リ過ぎて、周りが全く見えていなかったらしい。

両手を上げて大きく目を見開いた驚愕の体勢のまま、しっかりと目が合ってしまった。

「お、おはようございます」

東堂副社長は目を細めて、呆れたよう見下ろしている。

叶星は慌てて前を向き、奥にいる副社長に背中を向けた。


「朝から随分と、楽しそうだな」

――あ。
いま、鼻で笑いましたね?

振り返らなくてもわかる。せせら笑っているだろう彼の歪んだ口元がまざまざと目に浮かぶようだ。

「ええ、おかげさまで」
叶星はツンと澄ました。

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