溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
私たちはデートを続ける事にした。

連休で混みあった電車にゆられ江の島までやって来た。


「はー、気持ちいいね。」


久しぶりの海、潮の匂いが気持ちいい。
弁天橋を渡り弁財天仲見世通りでたこせんべいや団子を食べながらゆっくりと歩く。
エスカーでのぼり江島神社、サルエム・コッキング苑など江の島を1日思いっきり楽しんだ。

今朝、一くんのおかげで気分を害したことも忘れるくらい。



それなのに・・・。



夕方6時、大輝のマンションの最寄り駅に着いた。
外で夕飯をすませる事も考えたが今日はいっぱい歩き回ったし、どこも人が多いので2人でゆっくりする事ができないからと家で夕飯を取る事にした。
そして駅前にあるショッピングセンターで夕飯の材料を買いに寄ったら、今朝のデジャヴかと思う事が。


「大輝!うわー、大輝だ!」


と彼の腕に抱きつく女性。

誰?彼も誰か分からないのか、その人の顔を見つめたまま固まっている。


「えーと、誰か分からないけど離してもらえるかな?」


やっぱり分かって無かったのか。


「えー、ひっどーい。彼女の顔忘れるなんて。綾里よ。」


か、彼女?彼女は私よね?


「あー、広瀬さん。高校以来だから分からなかったよ。」

「良かった、思い出してくれて。ねえ、偶然に会えたのも運命だよ。今から飲みに行かない?」


えっ?あのー、広瀬綾里さん?私の事見えてらっしゃるかしら。

あなたが抱きついて離さない腕の反対側ので、ずっと大輝の手と繋がってる。
てか、大輝も何で彼女の事、引っぺがさないのよ!って、そうか私と手を繋いでるから剥がせないのか。
そう思い手を放そうとすると強くギュッと握られ『何で離そうとするの?』という目をされた。


「いい加減、離れて。見ての通り、今デート中なんだよね。これ以上彼女に不快な思いをさせたくないし、不安にもさせたくないから。」


そしてようやく彼女は初めて私の方を見た。


「あら、妹さんかと思ったわ。私、広瀬綾里、大輝の彼女です。よろしくね。」


はい?今ですよね?大輝が私の事を彼女に『彼女だ』って言ったの。
まだ自分が彼女って言い張る?この人の頭の中はお花畑か?


「広瀬さん、君は俺の彼女じゃないでしょ?正確に言えば高校1年の時に付き合っていた元カノ。君との縁はもうとっくの昔、8年前に切れてるんだよね。だから目の前から消えてくれる?」


うわー、今朝も見たよこれ!大輝の氷のような言動!そしてこの冷たい目!

でも当の本人には・・・効いてない!?この人ヤバい人?って思ってたら彼女の後ろから慌てて女性が2人駆け寄ってきた。


「すみません。友達がご迷惑をおかけしました。ごめんなさい。ほら、綾里行くよ、帰るよ!」


と言いながら大輝から引っぺがし『何でよ。なんで私の方が帰んなきゃいけないのよ!』と文句を言っていたが引きずって行った。
彼女を引き取りにきた2人の友達は私たちが見えなくなるまでペコペコと頭を下げていて、自分の事ではないのに可哀そうだった。


「なんか疲れたな。今日はもうデリバリーでも取らない?」

「そうだね。なんかね・・・。」


私たちは買い物をやめ、そのまま大輝のマンションまで帰る事にした。
今日は今朝から疲れた。私の元カレに始まり最後は大輝の元カノ。
それにしても彼女は強烈だったな、私ならもし一くんが彼女といたら気がついても声なんてかけれないだろう。

あの人が凄いのか、それとも私があまりに大輝の彼女としてそぐわないのか・・・。


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