溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
Side大輝

あの連休以来、俺はなるべく車通勤をしている。
そして電車で通勤しなくてはいけない時は遠回りで駅まで行く。

李子も俺の体調、食生活を心配し週に二回は食事を作りに来てくれているが、その時も広瀬を警戒しながらという息の詰まった事になっていた。

ある土曜、横浜での仕事が入り昼間のデートはお預けになったが夜七時ころには帰宅できそうだ。李子に『家で待っててと』連絡を入れ仕事に戻った。

三時ごろ休憩に入ったので李子に電話をしてみた。電話に出た李子の様子がどうもおかしい。


「・・・大丈夫くないかも・・・。」


はっ?大丈夫じゃないってどういう事だよ。

焦る気持ちがいっぱいで仕事場だと忘れ『何があった!』と叫んでしまった。
周りにいた人たちに何事かと視線を向けられ急ぎ人気のない場所に移った。


「ダイジョブ、ダイジョブ。今駅前のスーパーなんだけど買い物して外に出たら広瀬さんがいて、目があっちゃった。慌てて店内に戻ってきたんだけど、追いかけても来なかったし大丈夫。もう少し様子を見て帰るから。」


李子の口から出てきた名前に驚いた。
あの連休から一か月以上が経ち、まだ車通勤を続けているが俺も最近では広瀬の事を忘れかけていた。

たぶん李子もそうだろう。

あの日以来何度と電車で俺の家に来ているが見かけたことは無かったらしいから。
西口経由で帰ると言う李子、心配で出来る事なら今すぐ帰りたい。家に着いたら連絡する事と約束をし電話を切った。

仕事をしていても李子が心配でなかなか集中できない。
西口経由でも二十分もあれば家まで着くはずだ。
それなのにもう三十分は経っている・・・。

【今さっき家に着いたよ。】

やっとメッセージが、休憩時間でもないが電話をするため外へ出た。


「はーい。」


心配で心配でたまらなくて、大げさかもしれないがこの三十分、俺は生きた心地がしなかったと言うのに電話に出た第一声が呑気な声でこれだ。
今まで張り詰めていた気が一気に抜けた。


「無事着いて良かった。三十分は経つのに連絡無かったから心配した。」

「んー、ちょっと迷った。一本違う道に入っちゃって。」

「六時過ぎには帰れるから。もう外ウロウロしちゃダメだよ。」

「うん。分かった。大輝も気を付けて帰って来てね。お仕事頑張ってね。」


ハプニングはあったが仕事中に『お仕事頑張ってね』ってあんな可愛い声で言われたら頑張るけど、早く帰って李子を抱きたい!



家の玄関を入るとリビングに電気がついているがシンと静まり返っている。
もしかして外に出て何かあったんじゃないかと肝を冷やしたが、ソファーで李子は気持ちよさそうに眠っていた。

やっぱりこんな思いをしながら生活するのは・・・。

今日どれだけ俺が心配したかを李子に伝え、『いい機会だから一緒に住まない?』と提案してみた。悩む様子の李子だが拒む事はなかった。俺も直ぐに引っ越すのはムリそうだし、時間をかけて李子を落とすか。


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