溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
三月二日から八日まで私は奈津と卒業旅行に出かける。

同棲を始めて約二カ月、大輝が出張で家を空ける事は何回かあったが、私が泊りがけで家を空ける事は正月以外まだない。
しかも初めてが一週間で海外に行くとなった時は溺愛心配性の大輝を説得するのに一苦労した。

自分が出張に行く時でさえ一人家に残すのが心配だとか大騒ぎだから予想はしていたがここまでとは・・・。
学生時代最後の思い出と言い切り、何とか納得してもらい今、空港まで見送りに来てくれている。


「絶対に、誰にもついて行っちゃダメだからね。」

「分かってる。」

「ちゃんと連絡入れる事!」

「はい。」


さっきから空港ロビーで注意事項をずっと聞いている。


「大輝、お前それくらいにしとかないと李子ちゃんに愛想付かされて、グアムから家戻って来なくなるぞ。」


見るに見かねて大輝に声をかけてくれたのは青依先輩。
なぜに青依先輩がここにいるのか・・・。

それは、年末に行われた食べサーの報告会&忘年会で奈津と付き合う事になったから。

らしい・・・。知らなかった。

年末の食事会にはバタバタしていて出席できなかったから。
詳しくはグアムで聞くとして、大輝の事どうしよう。


「李子ちゃん、大輝の事は俺に任せて行っておいで。奈津も気を付けろよ。」

「はーい!向こうに着いたら連絡入れるねー、行ってきまーす。」


いいな、私も笑顔で『行ってらっしゃい』言って欲しかったな。


「青依先輩、よろしくお願いします。・・・大輝、行ってくるね。ちゃんと連絡入れるから。」


大輝を青依先輩にお願いして歩き出したら腕を引かれ大輝の胸に閉じ込められた。


「ちゃんと連絡だけは入れろよ。・・・楽しんでおいで、行ってらっしゃい。」


オデコにキスを落とし笑顔でちゃんと送り出してくれた。

あー、でも一人にして心配なのは大輝だけじゃない、私も同じ。
ちゃんとご飯食べるかなー。作り置きおかずは三日分作ってきたけど。
それに一人でちゃんと熟睡できるだろうか。最近では『李子が腕の中にいないと眠れない』が大輝の口癖なのに。一週間も睡眠不足でいたら倒れちゃう。

私を空港まで迎えに来るときに事故でも起こしたら・・・。
考えればきりがない。
飛行機の中で奈津に聞いてもらっていると『一緒にいると似てくるのかねー。』と呆れられた。


「李子、健康面ばっかり心配してるけど浮気の心配とかは無いわけ?一週間もいないんだよ?大輝先輩を狙ってる肉食女子とか寄って来るよ?」


んー、そう言われてもな。
普段、私にどっぷりかまい過ぎの大輝しか見て無いから想像が出来ないんだよなー。


「浮気・・・。想像できない・・・。」

「言った私が言うのもなんだけど、私も想像できないわ。スマホ片手に『連絡が来ない!』って騒いでる姿は想像できるけど・・・。」

「でしょー。」


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