溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
次に私が目を覚ましたのは病院だった。
救急車を誰かが呼んでくれたのだろう。
あんなに酷かったお腹の痛みも無くなっている。
左腕には点滴が繋がれていた。

ぼーっと天井を見ているとドアを開け母と内藤さんが入ってきた。


「李子!「李子ちゃん!」よかった。目が覚めたのね。」

「お母さん、内藤さん。」


私が目を覚ましたと報告を受けた医師と看護師が病室にやって来た。


「望月さん、気分はどう?吐き気などはないかな?」

「はい。」

「君は昨日の六時ごろ駅前のカフェで倒れたんだ、覚えてる?」

「はい。少し前に倒れた時に背中とお尻を強く打って、その後から少しお腹がいたみだして・・・、カフェに入って直ぐ暗いからお腹が凄く痛くなって・・・。」


五十代くらいの優しそうなそのお医者さんがウンウンと頷きながら話を聞いてくれる。


「今から説明する事、落ち着いて聞いてね。」


そう言うと医師は私が意識を無くしている十五時間の間にあった私の体について説明を始めた。


「望月さん、君は自分が妊娠していた事を知っていたかな?」

「えっ?」


想像もしていなかった言葉に目を見開き、同時に自分のお腹を撫でていた。
横からそっと母の手が伸びてきて、私の手に重ねられる。


「気づいてなかったかな?まだ七週くらいだったからね。」


だった?


「君が運ばれてきた時には間に合わなかった。さっきの話では背中とお尻を強く打ったと言っていたし、実際強く打ち付けたような痣も出来ていたから、それが流産の原因だと思う。」


流産・・・。

大輝との赤ちゃんがここにいたのに、知らない間に殺してしまった・・・。

お腹を撫でていた手を強く握りしめた。
目からは涙が溢れてきて止まらない。
医師がその後も何か言っていたが頭に入って来なかった。

私はもう一泊入院して月曜日の診察で問題なければ退院する事になった。
何時まで経っても大輝は来ない。


「お母さん、大輝は?」


私の質問に一瞬困った表情をした母。


「大輝君は来れないの。連絡を受けて昨日は直ぐに駆けつけてくれたのよ。でも先生からの説明を聞いて、あなたがこうなってしまった原因をきっちりと決着させてからでないと李子に会わせないって、忠さんが怒ってね。私にもわからないけど何か忠さんは知ってるのかもしれない。前にチラッと心配だって言ってたから。」


面会時間ギリギリの八時まで母はいてくれたが、『明日迎えに来るから。』と迎えに来た内藤さんと一緒に帰って行った。
一人になると色々と考えてしまう。あの母親だとやって来た人は一緒にいた女性を大輝の婚約者だと言った。

大輝・・・、婚約者がいたのに私と付き合って同棲してたの?

もう何が何だかわからない。ただ思うのは・・・。





赤ちゃん、ごめんね。私がもっと早くに気づいてれば・・・。







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