溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
翌日の診察の結果は良好だったので退院を許可された。

私はどこに帰るの?大輝とは会えないから、やっぱり実家かな?

車が着いたのは、やっぱり実家だった。


「李子、今週は体調不良で会社にはお休み頂いたから、ゆっくりしてなさい。」


そう言われ私は自室にあてがわれている部屋に向かった。
部屋に入って一瞬息が止まった。
大輝の家にあるはずの私の服やバックなどが全てではないが置いてあった。

なにこれ・・・。もう本当に大輝のとこには帰れないんだ・・・。

何もする気がおこらずベッドに潜り込んだ。


「りこー。お昼ご飯食べるわよー。」


母が部屋まで私を呼びに来たが食欲なんてない。
ベッドにもぐりこんでいたので返事もせず狸寝入りをする事にした。

夜、いつもより早く帰宅した内藤さんが部屋にやって来た。
母から食事もせず部屋に閉じこもっている事を聞いたのだろう。


「李子ちゃん、ちょっと話いいかな?」


布団の中に潜り込んでいたが少しだけ顔を出すと、ホッとしたような優しい笑みを浮かべる内藤さんがベッドのすぐ横に座り込んでいた。


「李子ちゃん、この荷物を見てショックを受けたんじゃない?ごめんね。これは僕が勝手に決めて大輝君に持って来てもらったんだ。」

「な、ん、で・・・。」

「初めに言っておくけど、僕も沙代里も李子ちゃんと大輝君を別れさせたくてこうしたんじゃないからね?君たちがこの先も一緒にいるために、ちゃんとけじめをつけるために、李子ちゃんを連れて帰ると言う大輝君を説得して、一時李子ちゃんと離れる事を納得させたんだ。」


そう言われても意味が分からない。


「李子ちゃんがマンションで会った人は大輝君のお母さんで間違いない。そして一緒にいた女性は彼女の親友とその娘。彼女はね、その親友の娘と大輝君を結婚させたがっていたんだよ。もちろん大輝君は受け入れなかった。父親も大輝君の気持ちが優先だと反対した。でも彼女だけは諦めなかったんだね。僕が出た集まりでも大輝君の結婚が決まりそうだとか一人言ってたからね。」


あの凄い母親なら納得できてしまう。
今、あの時を思い出しても怖いもの。


「李子ちゃんとの同棲を言い出した大輝君を一人呼び出してこの事について釘をさしてはおいたんだけどね。あの母親の突っ走りを誰も予想できなかったのかな。大輝君も今、もう一度李子ちゃんと暮らせるように走り回ってる。」


内藤さんの話を聞いている時にふと感じた。

大輝ってあのマンションにしても前のマンションにしても三十歳手前のサラリーマンが住める所じゃない。
それに婚約者って普通の家庭ではありえないよね。


「内藤さん、大輝の家の事をなんで知ってるの?」

「何年か前に仕事でね。まあ彼の家の事とか僕から伝え聞くのもね。今のごたごたがちゃんと収まって迎えに来てくれた時には彼自身が話してくれると思うよ。」


結局、モヤモヤが残ったままだが内藤さんもそれ以上は話してくれそうもない。


「全然ご飯食べてないんだって?沙代里が心配してる。少しでも食べないと本当に倒れてしまうよ。ご飯、用意してくれてるから行こう。」


お母さんにこれ以上心配させたくない。
食欲はないが少しでも食事をする事にした。



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