溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
「そうか、内藤さんか・・・。しかしナチュレ食品も奥さんと娘のおかげで、厄介な敵を作ったもんだな。うちも気を付けて今回の事は解決しないとな。」
意味が分からなかった。
中堅どころと言っていいナチュレ食品はともかく、うちまで?
SANグループは国内ではトップを争うほどなのに?
「大輝、何故?って顔してるな。堤設計事務所は少人数ではあるが今や国内に留まらず海外でも注目される事務所だぞ。確か今、ナチュレが堤設計事務所に新社屋の設計を打診していたはずだ。しかもメイン担当は内藤氏。」
「えっ。・・・だから、あの言葉・・・。」
「まあ、内藤氏が何処まで私情を持ち込むか分からんが、自分なら断るな。」
「五月さんがいろんな所で大輝の事を言いまわっていたように、あの親子も言いまわってたらしいしな。特に娘の方が。そんな家族がいれば何処で何を言われるか分からんから付き合いも遠慮したくなる。真一、うちも考えるか?」
「そうですね。不安要素は早めに排除しとかないといけないですね。ナチュレは元々、五月のお願いもあって付き合いだした会社ですし。最近ではうちのグループみたいに言ってると他所から聞こえてきますしね。ちょうど他に数社、面白そうな所からの売り込みもありますから、次の議題に上げてみますか。」
うわー、俺にはまだ経営の方は全くと言っていいほどわからない事だらけだが、妻と子が脳内お花畑で突き進んだ結果、会社にまで多大な損失を負わせることになるのか。
これで現実を見て正気に戻ってくれればいいけどな。
それよりも、うちの母親はどうするか・・・。
「なあ、母さんはどうしたらいい?後でもう一度、話をするつもりだけど。」
「たぶん聞く耳ないぞ。父さんと俺も昨日から散々言って聞かせてるんだけど、さっきのあれだ。」
「拓斗の時も五月さんは自分のお気に入りの子を押してたな。結局その時も拓斗に却下されたから余計、大輝にはって思ったんだろうがな。」
「はあ、ホント迷惑この上ない話だよ。でも今の母さん普通じゃないよね。一度病院へ連れて行った方がいいくらいだと思うけど。」
昼食をとった後、リビングで母さんも加えた四人で話をした。
母さんから竹内さんの話が出る前から李子とは付き合っていた事、母さんも知っているはずだが今住んでいるじいさんのマンションはちゃんと親父とじいさんに李子の事を認めてもらって住んでいる事、そして今回母さんが無理やり押しかけた事によって李子がケガをし、その衝撃でお腹にいた俺たちの子を流産してしまった事をじっくり、ゆっくり、話した。
俺たちが話終わるまで黙って聞いていたから分かってくれたと思った。
でもダメだった。
話終わって暫く沈黙が続いた後『そっ。それでいつにする?今からだと早くても半年は先よね。』って、今の母さんには何を言っても響かない。
そんな母さんを辛そうな顔で見ていた父さんがポツリと呟いた。
「五月、病院に行こうか。」