溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
直ぐに病院に連れて行く勢いの親父に何とか待ってもらい、俺は暫くの間マンションではなく実家から仕事に通う事にした。

まあマンションに帰ってあの真理とか言うヤツが待ち構えられてると疲れるしな。
実家なら親父もじいさんもいるから、あの母娘もそうそう来れないだろうと思っていた。

相変わらず話の通じない母さんだったが俺は根気強く李子の事を話し続けた。
親父に『お前凄いな』と言わせるほどに。



親父と母さんは恋愛ではなく見合いで結婚した。
だからと言って政略結婚でもなく、ただ親父が恋愛では思うような人がいなかったから見合いを数人として一番良かった母さんと結婚したんだそうだ。
結婚して今まで浮気をしたことも無いが俺が李子に対して抱いている愛情を母さんに持ったことも無いと言う。母さんの事を好きではあるが、しいて言えばLIKEであってLOVEではないらしい。だから今まで母さんの好きなようにさせていたらしいが、よく言えば天真爛漫だがお嬢様で世間知らず、世間から少しズレた感覚を持っている人なので今までも何度か親父が尻ぬぐいをせねばならない時があったらしい。



実家に戻って二週間が経ったある日、仕事から帰るとリビングにあの母娘がいた。
しかもあの日と同じように娘の方はエプロンを着け夕飯の支度をしている?
親父もじいさんもまだ帰って来てないようだった。


「母さん、これはどう言うこと?」


『大輝さんお帰りなさい。』と俺の腕にすり寄って来る彼女を振り払い母さんに問いかけた。


「大輝、真理ちゃんが『おかえり』って言ってるんだから返事は?」

「なぜ、この母娘がここにいる。」

「どうせなら早くこの家に慣れてもらおうと思って、今日からここに同居する事にしたの。部屋は大輝と一緒でいいでしょ?あなたのベッドはWだから広いし、結婚すれば一緒の寝室になるんだし。」

「はっ?「五月、どう言う事だ、それは。誰が許可した?」・・・、親父。」


ガチャリとリビングのドアを開け親父とじいさんが入ってきた。
ドアの向こうで俺と母さんの会話を聞いていたのだろう。


「お父様もおじい様もおかえりなさいませ。もうすぐお夕食の準備が出来ますから待ってて下さいね。」


親父の怒りきって冷めた空気も読めず娘の方がニコニコと話しかけてきた。
ある意味凄い。

そんな彼女を無視し親父はスマホを取り出してどこかに電話をかけ出した。


「ああ俺だ。直ぐにナチュレの竹内さんに連絡を取ってくれ。うちに来るように。」


ああ、この母娘の父親を呼び出して連れ帰らせるのか。
ナチュレとの契約もこれで終わりだな。


「そうだ。それと例の件も進めておいてくれ。」



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