溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
話を聞き終えてなんと答えたらいいのか分からなかった。

許せるか?と聞かれれば、完全に許しきる事は出来ないだろう。
でも憎む気持ちもなく、会う前はあんなに怖いと思っていたのに恐怖心も全くなくなっていた。


「お義母さん。」


私がそう呼ぶと俯いていた顔を上げ漸く私の目を見てくれた。


「私の事、お義母さんって呼んでくれるの?」

「だって大輝さんのお母さんですもの。・・・・・、今日、お義母さんに会うのは凄く怖かったんです。でも今日、会いに来てやっぱりよかった。正直、お義母さんの事を許せるかって聞かれると完全には許せないが今の気持ちです。でも今日みたいにちゃんと話をしていけばお互いの気持ちがわかって行けると思うんです。」

「李子・・・。」


黙って大輝は肩を抱き寄せてくれた。


「お義母さん、一時退院した時に一緒にお参りに行きませんか?」

「お参り?」


大輝と再び一緒に暮らせるようになって直ぐに私たちは亡くなった赤ちゃんのために水子供養をしに近くの水子地蔵のあるお寺へ参拝した。


「はい。家の近くのお寺で亡くなった赤ちゃんの水子供養を前に大輝さんとしてきたんです。私への謝罪は今日ちゃんとして頂きました。だから赤ちゃんの事も気にかけて下さってるなら、一緒に行きませんか?」

「私が行ってもいいの?」

「はい。一緒に行って謝りましょ。私も気がついていなかったとは言え守れなかったから。」


『ありがとう』とまた泣き出してしまったお義母さん。
私の肩をずっと抱きしめていてくれた大輝の顔を見上げると大輝の目からも涙がこぼれ落ちていた。
私が見ている事に気がついた彼は『見るな』と言って顔を背けてしまった。
その照れた様子を見てお義母さんも優しい眼差しでほほ笑んでいた。

初めて見るお義母さんの笑顔・・・。
本当は優しい人、子供の事もちゃんと愛してる人なんだなと思った。
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