溺愛しすぎじゃないですか?~御曹司の初恋~
お正月に大輝が言っていたように一月末にお義母さんは無事退院した。
家に戻ってから何度か会いに行ったが取り乱すこともない。

そんなお義母さんの事を大輝は『これが今までの普通の母さんなんだ。』と私にだけ聞こえるように教えてくれた。





二月中旬の土曜日、ついに結婚式の日がやって来た。
普通の式でも緊張するだろうけど私たちの式はSANグループの広報も兼ねた撮影が行われる。
朝から私の心臓はバクバクなのに横にいる大輝は平気な顔をしている。


式場に着きウエディングドレスに着替える。
普段から薄化粧しかしないからスタッフさんが施してくれた姿は私じゃないみたい。

支度も終わり花嫁の控室で待機しているとお母さん、内藤さんと達也が来てくれた。


「李子―、ほんとキレイよ。」

「まじ?これ姉ちゃん?」


なんて失礼な弟だ!

四人で話をしているとスタッフが時間になり案内に来てくれた。


「李子ちゃん、では行こうか。」


入場は父親とする。
私の実父はもういない、母と再婚した内藤さんと入場するのだ。


「お父さん、よろしくお願いします。」


そう言い内藤さんの腕に手をかけた。
すぐ横でその言葉を聞いていた母も内藤さんも驚き目を見開いている。


「李子ちゃん・・・。ありがとう。」


目にキラキラと光るものをこらえ、私が八歳の時から知っているいつものやさしい笑顔向けてくれた。
母は化粧が崩れるのも気にせず涙を流している。


「母さん、泣くの早すぎ。これじゃ今日何回化粧直ししなきゃなんない事だか。」

「達也うるさい。嬉し涙だからどれだけ流してもいいの!」





扉が開き真っ赤なバージンロードの先には、優しい笑みをした大輝が待っている。
大輝の元までたどり着き、内藤さんが『李子ちゃんを頼むよ』と大輝に受け渡された。『もちろんです』と答えてくれる大輝。

二人で神父さんの前まで進む。

誓いの言葉もキスも終わった。

教会の扉が開けられると式に出席してくれていた親戚、友人、知人や式場のスタッフが花びらの入った籠を持ち拍手で迎えてくれた。

階段の上から皆のもとへ降りようとした時、『李子、愛してる』とキスをされた。

誓いのキスは分かっていたから良かったが、不意打ちにみんなの前でキスをされ恥ずかしくてみんなの顔をまともに見れない。

キャーと叫ぶ女の子達、ヒューとはやし立てる男の達。


「それでは奥さん、足元気を付けてね」




無事に式もパーティーも終わり今日は式場近くのSANグループのホテルに一泊する。
そして明日から新婚旅行に旅立つ。
行先はヨーロッパ。一週間かけて数か国を周る予定だ。


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