母を想えば


―――――― 


3歩進んで2歩下がる生活から、1歩も進めず2歩下がる生活へと変わっていった。


バブル崩壊の煽りを受けて、

ハヤトと同じ立場になった人達はたくさん溢れていたみたいで、

毎日ハローワークに行くけど、

長蛇の行列で“受付すらできなかった”と肩を落として帰ってくる日々・・・。




「お願い。許して。」


「でもだからって・・!」


「ハヤトの次の就職先が決まるまでだから。絶対に他の男には触れさせないから。

短期間で“3歩分”の生活費を稼ぐにはもう“水商売”しか無いの・・!」


「・・・・・・・。」


「ハローワークから帰ってくるまでは私がハルカの面倒を見て、

夜はハヤトに見てもらえば、
育児にも影響は出ないと思う。」


「・・変な店じゃないよね・・?」


「大丈夫。よく分かんないけど、着物でおしとやかに接客する店って言ってたから。

女将さんも凄く良い人そうだった。」


「・・・・俺も・・もうなりふり構ってられないな・・。」


「・・・・。」


「分かった。その代わり、
絶対すぐに辞めさせるから。

土方でも泥臭いのでも何でも、しっかり給料貰える所を早く見つける・・!」


「合言葉は“ハルカにひもじい思いはさせない”だね・・。」


「違う。」


「え・・・。」


「“ハルカとトモコにこれ以上の苦労はかけない”だから。

俺ぜってぇ2人の幸せだけは最後まで守り抜くから・・!」



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