母を想えば


カラフルに塗られた背景。
ニコニコ顔でハサミを持った女の子。

ニコニコ顔で椅子に座って、
マントを着せられる男女。


その画用紙の中には、“お花屋さん”でも“ケーキ屋さん”でも“アイドルちゃん”でもなく、

“美容師”として、私とハヤトの髪をスタイリングするハルカが描かれていた。


「ハルカね~、
おっきくなったら、

おかあたんのかみきって、
かわいくしてあげる!」



ホントは3ヶ月に1回連れて行きたかった。
長くても半年に1回は連れて行きたかった。

2歩進んで2歩下がる生活になってしまった今、

1年に1回・・誕生日にしか連れて行ってあげられない美容院。


この子にとっては、ろうそくが灯ったケーキと同じぐらい目を輝かせる場所・・。

遊園地以上に心をときめかせる場所・・。


「じゃあハルカが美容師になったら、
母たんの専属スタイリストに任命するね!」


「うん!にんめー!」


「アハハ。じゃあ約束。」


「ゆびきりげんまん!
うそついたらはりせんぼん、のーます!」


「指切ったっ。
じゃあ・・寝るぞー!」


「おー!」


重ねた小指が離れた後、
ぎゅっとその体を包み込んで、

アホ寝顔の横で、可愛寝顔が“ぐーすか”イビキをかくまでお腹をポンポンした後、

お風呂場へと向かった。




















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