母を想えば


一瞬、「?」が浮かんだ。

すぐに愛知に来たわけじゃないのか・・。


20年前に旦那さんが自殺して、
娘さんとは長年の絶縁状態。


娘さんは“彼女の所在を知らない”との事だったから、

てっきりもっと前からこっちに居ると思ったけど、意外と娘さんの近くに居たのかな?



「でもトモさん。こっちに来る前から長年この仕事をしてたみたいで、

手際も接客も良くて・・

何より・・お客様からの人気があっという間に高まっていったんです。」


「男心をくすぐるような綺麗な方だったんですね。

まぁ私はボコボコに殴られたトモコさんの顔しか知りませんが。」


「ちょ・・真田さん!!」


何の遠慮もなくぶっ込む真田さんのデリカシーの無い一言に女将さんの顔つきが暗くなる。


「あの・・トモさんってやっぱり杉内様に・・?」


「聞くところによると、杉内検事長もこのお店の会員だったそうですね。

満島さんの接客も受けてましたか?」


「・・・・・・・・・・・・・・。」


「「・・・・。」」


「・・・・・・・・・・・・。」


「「・・・・?」」



なんだ・・?
女将さんが口を紡いでしまった。

その視線はまるで・・
“言ってもいいのか?”と泳いでいる。

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